musician's talk ウクレレを愛するミュージシャンへのインタビュー
gray-dot
Vol.2:
バンドのリズムを変えたウクレレ。


sekiguchi

ウクレレを手にすると変わるモード

――その後はどんなウクレレを買ったんですか?
「フジゲンのハーブ・オータ・モデル。あとフルークの三角のウクレレを買いました」

――今のメインは?
「NUTSCOです。最近評判になっている広島のウクレレで、マーティンの3Mのコピーモデルです」

――どういうポイントで選ぶんですか?
「そんなに高い意識で選んだわけはないのですが、最初のウクレレがああですから(笑)、まずチューニングが合うこと。そしてライヴで使いますからそこそこの音量があること、ツアーに持って行くので強いことです」


7月にPoe Poe(東京・祐天寺)で行われた「ウクレレ バンバンバザール2009」のライヴ。曲順未定・完全気分次第のライヴで、3人のグルーヴは最高! 
――サイズは?
「ソプラノです。僕にとってはコンサートを使うんだったらギターを弾いた方がいいな、と。やっぱりウクレレはウクレレらしい方がいいので。チューニングはハイGです。ローGはいろんなことができて名人もいて素晴らしいと思うんですけど、僕はもともとギタリストだし今もギタリストですから、ウクレレを弾く時に求めるものはウクレレっぽさで、ハイGの方がコードのヴォイシングがウクレレなんです。そういう意味でソプラノの方がウクレレらしいですよね」

――ギターを弾いてきた人は弾きやすさからコンサートを選ぶ人が多いですけどね。
「そうですね、大きいから弾きやすいとは思いますけど、ソプラノでできることをやろうと思いました。ギターの方が音が伸びますよね。ウクレレはそんなに音が伸びるわけではないし、伸びるポイントが限られているから、それに適したプレイになっていくじゃないですか。だからウクレレを弾く時のモードがちょっとずつ出来てきましたね。ギターで弾いていることをそのまま置きかえるんじゃなくて、ウクレレだったらこれくらいでいいよ、と自分の中で敷居をちょっと低く捉えられる。そのへんが僕に限らずギタリストやベーシストがウクレレにハマる理由なんじゃないですかね? いい意味でそんなに精密にやらない方がウクレレの良さが出せるようなところがありますから。ギターだったらちょっとでもピッチが狂ったらダメだ、ってなるところを、ウクレレは録音物を聴いていてもチューニングが甘いものが多いじゃないですか。でもそんなことよりもウクレレの空気感が大きいから悪く聞こえないでしょ? ギターを弾いているときに重箱の隅をつつくように陥りがちだったのが、ウクレレと出会ってからゆるい良さや空気みたいなものをわかってきたんですね。そういうものの大切さをウクレレは教えてくれました」

――ウクレレは煮詰まっちゃいそうな時にいいですよね。頑張らなくていいという不思議な魅力がありますよね。
「たとえば、僕はギターが本職でしょ? セッションの時にヴォーカリストとかに『じゃあキーはこれで』って言われたらどんなに難しいものでもエニー・キー・エニー・リズムOKじゃないと自分で自分が許せないんですよ。でもウクレレだったらD♭って言われたら『Cでもよくない?』みたいなことが言えちゃうくらいモードが変わるんですよ。それこそがウクレレの良さじゃないかと思いますね」

オリジナル曲に加えジャズ、ブルース、「渡る世間は鬼ばかりのテーマ」などなどバリエーション豊かな選曲で観客は大盛り上がり。この日はベースの黒川さんもウクレレ・ベースを披露。

跳ねていくリズム

――富永さんにとってソプラノウクレレのヴォイシングの魅力はなんですか?
「爽快感ですね。ギター的に言うと一番低い音であるべき場所が高い音(ハイGの場合)というのは爽快感、軽快感がある。だけど悪い言い方をしたら安定感はないですよね。アコースティックギターだったら低音弦をベース代わりに弾くプレイがありますけど、ハイGのウクレレはそういうことができない。でも安定感がない、どっしりしていないということは空気感があるということじゃないですか。あとバンバンバザールでもブルームーンカルテットでもそうですけど、ベーシストとやる時に僕がコードでGを弾いても、一番下にある音がGじゃないんですよ。Bだったりするので、聴く人によってベーシストがBを弾いちゃったりするんです。だから思っていることが全部伝わるわけじゃない、というところもあるんです。そこがまた面白かったりするんです」

――ウクレレは違うコードも同じ押さえ方に解釈されることがありますよね。
「そうですね。ギターで弾くCとAm7はすごく違うんですけど、ウクレレで弾くとほとんど一緒なんですよね。進行していかないとわからないんです」

――富永さんが曲を書くときに、ウクレレだと和音が一緒の場合、流れのなかでコードを書いていくんですか?
「参考になるかどうかはわからないですけど、比較的ポピュラー系な人だったらコードにテンションを指定して書くんですけど、僕はあまりテンションを書かないんですよ。C7とかFm程度は使いますけど、テンションはその曲を聴いた人がフィーリングで付ければいいと思っているんです。そもそもコードにテンションなんか足さなくたって、単純な3和音のコードにメロディが乗れば、それがトップになると勝手にテンションになるんだから、と考えてます。ただしウクレレの場合はCを弾く時に単純なCよりもC6のコードを基本に使った方が気持ちがいいとか、ウクレレを弾く時の手癖がちょっとは出てきたのでよく使ってますけどね」

――ハイGの独特な雰囲気が音楽をどんどん引っ張っていってくれますよね。バンバンバザールの音楽がハイGのウクレレによって変わったと感じるのはどんなことですか?
「ノートなど音のことはほとんど変わらないです。変わったのはリズムです。圧倒的にリズム。ギターのように低音弦をベースとして捉えることがないじゃないですか、だから浮遊感があるでしょ? ということはどんどん跳ねていくんです。リズムが跳ねていた方がハマるんですよね。たとえば専門的なことを言っちゃいますけど、4ビートのスウィングは時代が新しくなればなるほどスウィング感が四角くなっていくんです。スクエアというか、都会的になっていくんです。古いもののほうが跳ねているんです。ウクレレを使うと古いスウィングのノリが出るんですよね。僕らは2ビートだとか戦前のスウィングのサウンドと相性がいいみたいなので、ウクレレを使うと意識しなくても勝手にそういう方にまとまるんです。それはウクレレだけじゃなくて、セッションにウクレレが入っているだけでベーシストもドラマーもギタリストもピアニストもそっちの方向に行くんです」


――へぇ〜! ウクレレが引っ張っていくんですか。
「そう。とは言ってもそんなにリズムの支配力があるわけじゃないんですよ。ギターやベースのように強くブレイクをかけたりはできないですし。ウクレレが鳴っている感じはドラムのブラシに近いんじゃないですかね。ブラシで“シャカシャカ”やる人はいないでしょ? みんな“シャ〜カ シャ〜カ”ってやるじゃないですか」

――なるほど。それにリードを弾く場合はギターは当然活きるけれど、アンサンブルの隙間を埋めるのはウクレレのポイントかもしれませんね。
「厳密に言うとアコースティックギターの弾き語りをしている人でもレコーディングで上手いこと音をまとめないとヴォーカルとギターが分離しちゃうんです。インストライヴでもラインのアコギの音とマイクのヴォーカルの音が分離しちゃってサウンドしていないことは多いじゃないですか。実はその間のエリアにウクレレのような楽器があるんじゃないかなって思いますね」

――音階もそうだし音もそうだし、間に必要な楽器なのかなと思いますね。でも今の音楽シーンでレコーディングにいろんな楽器を多用することはあまりないですよね?
「そこは強く意識しているわけではないですよ。でもあまり奇をてらって“ここはバンジョー弾いてみよう”とか“この部分は違う楽器でセッティング変えてみよう”とかいうことをしたところで、ライヴで再現できないんですよね。印象がまったく変わっちゃうし、僕らはライヴが多いですから、あまりそちらの印象が強すぎるとライヴでの印象が違い過ぎるな、と思うときはあります。音色に耳が行っているアレンジで素晴らしい音楽もいっぱいありますけどね。強く思っているわけではないですけど、そういう気持ちが根底にあるから楽器はあるものでやっちゃおう、と。もちろんその中でちょっと録り方を変えたりとか細かいことはしていますけど。だからウクレレを弾くことによって持ち駒がひとつふえましたよね」





















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