Ukulele Peopleウクレレとともに生きる人へのインタビュー
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hibiscusきっかけさえ作ってあげれば、子供たち同士がつながっていく

――2010年夏のウクレレピクニックのステージで初披露目となった「ケイキ・ウクレレ・オブ・ジャパン」ですが、子供たちが一生懸命演奏している姿はとても微笑ましかったです。これはそもそもどんなプロジェクトなんですか?
「ウクレレを通して日本の子どもたちと世界中の子どもたちとの文化交流や、ミュージックセラピーなど幅広い活動をしていこうという、子供たちのためのプロジェクトです。日本の子どもたちにもっとウクレレの楽しさを知ってほしい、この楽器の素晴らしい力で、その先の人生でも音楽を友だちにしてほしいという思いから始まりました。教師やウクレレ講師、ミュージシャン、ボランティアを中心に運営していきます。その第1弾がウクレレピクニックのステージをお借りして披露した演奏でした。僕の娘もこれにマラカスで参加したことがきっかけでウクレレを弾きはじめたんです。はじめはまったくウクレレに興味を持っていなかったのに、周りの子たちから刺激を受けたみたいです。子供の上達は速くて、もう僕、抜かされそうですよ(笑)」

――子供の吸収力ってすごいですからね。
「関口さんとも話しているんですけど、ウクレレって“きっかけ”になるんですよ。たとえばなかなか友達ができない子供もウクレレで友達ができたり、親子でも楽しめる楽器なので親子の会話が増えたという嬉しい報告もあります。子供たちの練習風景を見ていると、自然と年上の子が年下の子供たちに教えていたりして、ちゃんと子供たちのコミュニティが作られている。このプロジェクトをやってよかったと実感しました」


子供の楽譜にはこんな絵が描いてあったりして可愛いのだ。
――学校という枠を超えて友だちになる機会があるのは嬉しいですよね。
「大人がきっかけを作ってあげることで、あとは子供たちが全部自分たちで作っていくということがわかったんです。最初のステージに“子供たちの音楽祭”というサブタイトルを掲げたのも、そういう意味を込めたんです。大人があれこれと全部決めてやるよりも、子供たちの意見をメインに作っていきたいと思っているんです」


――具体的には、子供たちからはどんな意見がありましたか?
「最初は『難しくない曲をやろう』から始まりました。でも難しいコードを弾きたいという子もいるので、そういう子は自分でアレンジしてもいいよ、と」

――いろんなレベルの腕前の子がいますしね。

「練習で会うと、上手な子がほかのみんなに教えているので、お互い刺激になるみたいで『また会おう』という言葉が子供たちから出るんですよ」



デイジー☆どぶゆきさんと一緒に「レレ・ハッピーデイ」を演奏した子供たち。みんな元気いっぱい!
――曲はどうやって選んだんですか?
「何曲か聴かせて、子供たちが選んだのがデイジー☆どぶゆきさんの『レレ・ハッピーデイ』だったんです。第2弾としてクリスマスに開催したメレカリキマカ2010のステージでは、ハワイの子供たちにもメッセージを送りたかったのでジョディ・カミサト(ハワイでウクレレ・スクールを運営し、子供たちにウクレレを教えているミュージシャン)に相談したら『Drop Baby Drop』をやろうということになったんです。ジョディが譜面を書いて演奏をYou Tubeにアップして、子供たちはそれを見ながら各自練習したんです」


――今は世界共通のネットワークがあるから、離れていても可能ですもんね。現代っ子ならではのコミュニティですね。
「秋にはハワイの子供たちが日本に来る予定です。今のところ50人くらい希望者がいるので、親子で積立貯金をしています。日本の子供たちと交流を図るために、キャンプをしたり、ディズニーランドのステージで演奏するなど、楽しいことをいろいろと企画しています」

――ウクレレをきっかけにして友だちの輪が世界に広がっていくって、ワクワクしますね。
「ハワイだけじゃなく、たとえばオーストラリアにもウクレレを弾く子供たちが多いらしいんですよ。世界中にどんどん広げていきたいですね」

ウクピクのステージの後は、ジョディ・カミサトとクリス・サルバトールをインストラクターに迎え、ワークショップも開催された。

――このプロジェクトを作るきっかけはなんだったんですか?
「関口さんが昔から子供と一緒に何かやりたいと言っていたんです。その理由を聞いたら、『今の子供たちは塾通いで忙しかったり、遊びはゲームだし、学校ではいじめがあったりして、本来の子供らしさを持っていないよね』という話になったんです。子供たち同士でつながるものをウクレレで作ることができるんじゃないか? というところからこのプロジェクトの構想が生まれました」

――今の子供たちは、子供同士のつながりも希薄なんですかね?
「そうですね。塾だけじゃなく習い事をたくさんやっている子供も多いし、なかなか友達を作ることができづらい環境にあるみたいです。でもこのプロジェクトを始めたら、『ウクレレをきっかけに友だちができました』というお手紙をくれたりして、やっぱり子供たち自身、友達が増えることは嬉しいんですよ。夏休みの思い出で一番楽しかったのがケイキ・ウクレレ・オブ・ジャパンだって言ってくれる子もすごく多かったんです。このあいだ子供たちが描いたイベントの絵日記が関口さんのもとに届いたんですけど、感動しましたね。純粋にやってよかったと思いました」

――参加している子供たちはどのくらいいるんですか?
「1回目と2回目のイベントに参加した子を合わせると全部で64人です」


――ウクレレを触ったことがない子も参加OKですか?
「もちろん。ウクレレだけにとらわれなくていいんです。タンバリンでもカスタネットでも、いろんな楽器が入る方が楽しいですしね」


プロジェクト第2弾が、メレカリキマカ2010での演奏。総勢50人の子供たちが「レレ・ハッピーデイ」と「Drop Baby Drop」を披露。

――2回イベントをやってみて、改善した方がいいと感じた部分などありますか?
「まずもっと子供たちの参加を増やしたいと思っています。いきなり風呂敷を広げるのは不安だったので、最初は関東の子供たちに限定して募集したんですよ。でもイベントをやってみて自信がついたので、これからはエリアを広げていきたいと思っています。あと前回までは子供たちが一緒にいられる時間が短かったので、もっと長く一緒に過ごせる時間を作ってあげたいと思いますね」

――そう考えるとキャンプは最高ですね。一緒に寝て一緒に起きて、ずっと一緒だから絆も深まりますね。
「そうなんですよ。あと子供たちみんなで同じ曲を弾くのもいいんですけど、子供にはそれぞれ個性があり、好きな曲が違ったりするので、次回はそれぞれの演奏を発表する場も作ってあげたいと思っています」


hibiscusウクレレには平和が似合う

――斉藤さんのウクレレとの出会いはどんなものだったんですか?
「10年以上前ですが、ハワイにいた時に9.11の同時多発テロが起こって、日本に帰れなくなったんです。不謹慎な話かもしれませんが、賑やかなワイキキの店もすべて閉まってしまい、何もすることがなかったので、ブラブラと海に行ったら、日系人のおじいちゃんがウクレレを弾いていたんです。『あぁ、いいなぁ』と眺めていたら、そのおじいちゃんが弾き方を教えてくれて、すごく楽しかったんですよ。それでその足でカマカファクトリーに行ってウクレレを買ったんです」

――それがこのコンサートウクレレなんですね。
「それ以来ずっと弾き続けていて、自然とウクレレ関係の仕事をしている人やミュージシャンとも知り合いになっていき、そうこうするうちに関口さんとも出会ったんです。関口さんはずっとウクレレ・ミュージアムを作りたいと言っていて、僕は建築関係の仕事もしていたことから知人に紹介されて、ミュージアムの構想を手掛けたんです。それがきっかけでビル・タピアさんの初来日公演を事務局として任されるようになりました」

――ウクレレを娘さんに教えたりしているんですか?
「僕からすすんで教えることはないですけど、娘が聞いてきたら教えています。一緒にウクレレでセッションしたりもしますよ」


斉藤さんの愛器のカマカ。いろいろと弾き比べた結果、これが一番ハワイっぽい音色だという理由でチョイス。すごくいい音なのだ!

――へぇ〜、一緒にウクレレ弾くなんて、可愛い親子ですね。
「僕の歳だとなかなか暗譜ができなくなるんですけど、子供は暗譜がすごいんですよ。『パパ、そこコード違うよ』なんて突っこまれることもあるんでね……」
(ポロンポロンとウクレレを弾く)
「やっぱりカマカが一番いいですよね。ウクレレを始めたいという友だちにはまずこのカマカウクレレを貸してあげるんです。長く弾くならカマカだろうと」


――カマカウクレレのどこがいいと思います?
「ウクレレって、一人で弾く楽しみも、大勢で弾く楽しみも両方あるじゃないですか。カマカは両方に合うんですよ。一人で弾いても味わい深いし、グループで弾いても音のバランスがよくて他の楽器と馴染むんです」


――ほかにもたくさん楽器はあるけれど、なぜかウクレレは人をつなぐ力のある不思議な楽器ですよね。
「そうそう、その理由を関口さんともよく話しているんですけど、ウクレレはとにかく平和。競争が似合わないんですよね。関口さんは誰が一番とか二番とか、順番をつけるのが苦手なのでコンテストの審査員はやらないんです。ケイキ・ウクレレ・オブ・ジャパンではウクレレをきっかけに友情とか家族愛とか、絆を深めてもらえたらと願っています。ハワイにホームステイしに行くのもいいですし、海外からの子供たちはいつでも受け入れたい。最終的にはみんなでCDを作れるくらいになればいいなと思っています」


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