specialカマカ社の人々インタビュー
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毎年1月にアメリカ・アナハイムで開催されている「Namm Show(ナムショー)」。世界中の楽器メーカーが最新モデルを発表する場であり、カマカも毎年出展している。今回カマカはハワイの州魚のインレイを施した豪華なショーモデルや、デラックスモデルなどを展示。気になるそのニューモデルについて、カスタム担当のケイシー・カマカに話を聞いた。

Text : Daisuke Yoshimi Photo : Kaz Tanabe, Kuni Nakai


――ナムショーで発表したモデルについて教えてください。
「カマカは毎年参加して通常モデルを展示していますが、今年はいつもと違うものを展示したいと思っていました。そこで作ったカスタムモデルが魚のインレイのウクレレです。コアの木は私が保管していたもののなかで最高級の素材を使いました。長年使わずに保管しておいた特別なもので、オアフでとれたコアの木材なんです。オアフのコアというのはとても貴重なんです。インレイのモチーフは、ハワイの州魚フムフムヌクヌクアプアアです。普段はカスタマーから受けたオーダーのカスタムを作っていますが、今回は自由に自分の好きなデザインのウクレレを作ることができたので楽しい作業でした。来年以降もナムショーには新しいカスタムを作って展示したいですね」

――このモデルは何本制作したんですか?
「1本だけです。そんなに自由時間はないですから(笑)。ナムショーに間に合わせるために、製作期間は2ヶ月でした」

――そのウクレレは誰の手に?
「できあがったら買いたいと言っていたハワイの知人が買い取りました」


――では現在取り組んでいるカスタムモデルはどんなものですか?
「今作っているのは、とても美しいメープルの木材を使ったウクレレで、こちらもカスタム・インレイを入れます。デザインはこれから決めますが、今回は魚ではありません。私は同じ物を二つ作らない主義ですからね。これもハワイを意識したデザインにしたいので、ハワイ固有種の花などを考えています」

――製作中の黒澤楽器がオーダーしたスペシャル・モデルについて教えてください。
「これはカマカの日本総代理店である黒澤楽器の創業55周年を記念して依頼され、製作しました。ベースになっているのはオータサン・モデルと同じデラックスのスタイル。トップにイングルマン・スプルース、サイドとバックにはゴージャスなカーリーコア、リクエストに応えてローズウッドを使ったロープバインディングを施して、リッチなヴィンテージ・ルックに仕上がっています。指板とブリッジはエボニー、ヘッドにはアバロン貝でKKのインレイを入れました。このスタイルでソプラノ、パイナップル、コンサート、テナーを製作しました。これらのウクレレは、あえて一本の同じコアの木から削りだした木材で作った、という点でもユニークなものです。」



Deluxe Special Series
Standard HF-1DS
TOP:Spruce
SIDE:Figured Koa
BACK:Figured Koa
NECK:Mahogany
FINGERBOARD:Ebony
BRIDGE:Ebony
60
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日本限定のカスタムモデル『デラックス・スペシャル・シリーズ』。ソプラノ・スタンダード、ソプラノ・パイナップル、コンサート、テナーの4機種で各10本ずつの合計40本の限定発売。

ボディ・トップ:イングルマン・スプルース
ボディ・バック&サイド:カーリー・コア
フィンガーボード&ブリッジ:ブラック・エボニー
ヘッドロゴ:アバロン・パールインレイ
ボディ・インレイ:ロープ・バインディング

1:コア材のヘッドプレートにゴージャスなアバロンパールのKKロゴが際立っている。
2:高音の伸びが特徴のイングルマン・スプルース材を用いたトップには、カマカの伝統を誇るローズウッド材を用いたロープ・バインディングとロゼッタが施されている。
3:フィンガーボードとブリッジにはブラック・エボニー材が使用され、歯切れのよいサウンドがこのモデルの特徴となっている。
4:1本のコアの木から削り出された美しいカーリー・コア材。真っ白なイングルマン・スプルースとのコントラストが美しく、そのサウンドも伸びやかで力強い。

Deluxe Special Series
Standard pineapple HP-1DS
TOP:Spruce
SIDE:Figured Koa
BACK:Figured Koa
NECK:Mahogany
FINGERBOARD:Ebony
BRIDGE:Ebony
60
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Concert HD-2DSとTenor HF-3DSも、日本限定シリーズ特設ページで紹介しています。



――日本のファンが喜びますね。では今後の製作予定は?
「私の仕事の基本は、プロのミュージシャンのためにカスタム・ウクレレを作ること。だから常にミュージシャンの誰かのためにウクレレを製作していますが、つい最近完成したのが、マーク・ヤマナカに依頼されていたウクレレ。素晴らしい歌声のシンガーで昨年ナ・ホクの新人賞を獲得したアーティストです。あと、まもなく完成予定なのがタイマネの新しいウクレレ。ジェイクのために作っているウクレレもあります。ほかにもオーダーはありますけど、リストを見ないと……(笑)。今はウクレレが国際的なブームになっていて、世界中のアーティストからオーダーが入るんです。プレイン・ホワイト・ティーズもカマカのウクレレを使ってレコーディングしてくれているし、あと全米放送のテレビ番組でも使われたりして、私たちカマカにとって、とてもいい時代ですね」

――ウクレレ職人としてジェイクから絶大な信頼を得ていますが、ジェイクのウクレレ作りにはどんな魔法を?
「うまく言葉にできませんが、素材の木と波長を合わせるというか……なにしろ木はそれぞれ違うものですから、その木に合わせて作業を進めなければいけないんです。木材の状態を常にチェックしながら。だから私はいつも木を耳にあててトントン叩いています。とくにジェイクの演奏スタイル、そして旅の多さに耐えうるウクレレとなると、音質だけじゃなくて強度や耐久性とのバランスにも気を遣います。彼は耳がすごく良くて、普通の人なら気づかないような音を聞き分けることができるんです。ジェイクには彼の好みの音がはっきりとあるんですよ。そしてルックスに関して言えば、見た目のウクレレらしさを重要視しているので、スプルース・トップよりもコアが彼の好みです。コア以上にハワイらしい木材はないですからね。ジェイクとは長年の付き合いですし、今では彼がウクレレに求めることがよくわかっていますから、信頼もしてくれているんでしょうね。私はとにかく父から学んだ技術と、年月をかけて経験から学んだ、木のこと、音楽のこと、音の響きのこと、それらすべてを製作に注いで、ベストのウクレレを作るよう最善を尽くすだけです」

――では関口和之さんのために作った新しいウクレレについて教えてください。
「今回のウクレレピクニック2012イン・ハワイで演奏していたウクレレです。コンサートサイズでロングネック、オールコアでとてもいい音が鳴ります。チューニンペグをクラシックギター用のものにしてありますが、これは私が気に入っておすすめしたものです。日本のスーパーバンドのミュージシャンという立場の人が、ウクレレが素晴らしい楽器だということ、人をハッピーにしてくれる楽器だということをプロモートしてくれているなんて、素晴らしいことですね。それにハワイでウクレレピクニックを開催して、ハワイに日本の人を連れてきてくれることはすごくありがたいと思っています」

――日本のカマカ・ファンへメッセージをください。
「私たちカマカの楽器を愛用してくれてどうもありがとう。これからも私たちは、さらに質の高いウクレレを、より多く作っていくことにベストを尽くします。みなさんがこれからもウクレレを楽しんでくれることを願っています。Keep strumming!」



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