最高齢ウクレレマン ビル・タピア便り
gray-dot

ビルさんの暮らすカリフォルニアのハンティントンビーチで「ウクレレナイト」が開催されました。ウクレレファンにはおなじみ、ハワイのウクレレ&ベースプレイヤー、ベニー・チャンとバイロン・ヤスイがこの日の主役ですが、我らがビルさんもこの日のライヴに飛び入り参加! 南カリフォルニアのウクレレファンでいっぱいになったウクレレナイトの模様をお届けします。
 
Text & Photo : YUSUKE MAKINO
Design:TARO WATANABE(77GRAPHICS)


会場となったのはハンティントンビーチにあるウクレレショップ「アイランド・バザー」。店内にはウクレレはもちろん、ハワイアンミュージック、サーフミュージックに関するさまざまなものが揃う。
 ハワイ出身の伝説のサーファー、デューク・カハナモク。スポーツとしてのサーフィンを世に広めた彼の功績を称え、銅像がワイキキビーチに建てられていることはみなさんご存知かもしれないが、実はアメリカ本土にもデュークの銅像がある。「サーフシティ」とニックネームがつけられた街、ハンティントンビーチにもデュークのブロンズ像が建てられているのだ。
 そんなハワイやサーフィンと深い結びつきを持つハンティントンビーチのウクレレショップ「アイランド・バザー」でライヴが開催された。ハワイからやって来たのはウクレレプレイヤーのベニー・チャンとベーシストのバイロン・ヤスイ。ビルと同じハワイ・オアフ島で生まれ育った二人のミュージシャンが今回の主役だ。数年前よりデュオを結成してすばらしい音楽を聴かせてくれる二人だが、ともに70歳に近いベテランミュージシャン。しかし、 ビルに比べれば、まだまだ若手!彼ら自身がリスペクトするビル・タピアもライヴを楽しみに観に来てくれるとのことで、二人のテンションもかなり上がっている。


 彼らのサウンドの基本はスムース・ジャズ。二人とも物心がついた頃から音楽と人生を重ねてきたプレイヤーで、自然なスタイルの中から心地よい優しくメロウなサウンドを生み出す。バイロン・ヤスイの大きな手と長い指からはじき出されるベースは安心感のある心地よいサウンド。だが時にはまるでギターを掻き鳴らすような大きなストロークでアグレッシヴにプレイし、心地良いジャジーなサウンドの中にバイロンらしいスパイスを効かせる。メロディラインを奏でるベニーのウクレレは実に暖かいサウンドで会場全体を包み込む。大きな手を生かしたダイナミックなフレットさばきから生み出すベニー特有のコードとメロディ。時に熱く、時には静かな目配せでリズムを整えながら奏でる二人のハーモニーに、オーディエンスは完全に飲み込まれていった。


ベニーのウクレレは独自のコードスタイル。ハーモニーを大切にし、パートナーであるバイロンのプレイを引き立てる、愛情あふれるプレイが最高!

バイロンのベースは実にアグレッシヴなのに安定感がある。縦横無尽にベースを掻き鳴らす!

 ジャジーなムードでスタートしたライヴも、ハワイアンあり、アップテンポなボサノヴァありと、曲ごとにどんどん表情を変えながら、ベテランのハワイアンミュージシャンによるアロハな空気に包み込まれていく。最前列で耳を澄ましていたビルは、目を閉じてリズムをとったり、時には鋭い眼光で彼らの指先に注目したりと、やはりプロフェッショナルの耳と目で、二人のサウンドに聴き入り、そして楽しんでいた。ステージが進むにつれ、二人のプレイはヒートアップしていく。夕暮れのハンティントンビーチに吹く風が吹きぬける会場で、オーディエンスは最高に心地よい音楽を堪能した。


ビルが会場に到着。エスコートするのはアイランド・バザーのオーナー、シャーリー・オーランド。

最前列でベニー×バイロンの演奏を楽しむビルと、ギタリストでビルのマネージャーも務めるパット・エノス。

 ベニー&バイロン。このデュオは歌わない。会場を沸かせる話術はなかなかのものだが、ヴォーカルの入る音楽は自分たちのスタイルではないという。インターバルを挟み、後半のプレイが始まろうかという時、ビルは観客席の最前列から抜け出し、ステージを背に会場を見渡した。どうやらビルもステージに参加するようだ。自分の名が入った真っ赤なウクレレを抱え、プレイに備えてオーディエンスに軽く自己紹介。バイロンやベニーとの付き合いが長いビルに、いまさらリハーサルは必要ない。三人で曲目のみ確認し、短い目配せの後、ベニー、バイロン、そしてビルという“BBBトリオ”による演奏で後半ステージの幕が開いた。


プレイの前に、オーディエンスに挨拶。ストライプのパンツにワインカラーのシャツ、タイとジャケットとハットはホワイト! 103歳のビル・タピア、生涯オシャレを忘れません。

 曲は「Exactly Like You」。予想外のビルの飛び入りにオーディエンスもエキサイトし、そして耳を澄ます。ビルの刻むリズム、熱の入ったソロプレイ、そして優しい歌声……。そのすべてを引き立てるように、バイロンのベースとベニーのウクレレがアロハな世界を作り出す。いきなりスタートした1曲だったが、プロミュージシャンとしての三人の懐の深さを見せつけられたセッションだった。曲が終わると会場からは惜しみない喝采が!スーパートリオの心に染み入るサウンドに目頭を拭う人もいた。


このトリオのプレイはスペシャル過ぎるでしょう!


バイロンもウクレレに持ち替え……
 その後もベニーとバイロンの心地よいジャジーなライヴが続く。バイロンも数曲の間ウクレレを手にし、幅広い音楽性の一面を披露する。年数はビルには及ばないが、60年以上もハワイアンミュージックとつき合ってきた彼らだ。ウクレレだけでバラエティに富んだ深いサウンドを聴かせてくれる。
 最後の1曲は会場からのリクエストによる「ブルーハワイ」。定番中の定番でもある曲だが、ほかの誰とも違う、ベニーとバイロンだけのサウンドで、ウクレレナイトを締めくくった。


プレイがばっちりキマったらナックルタッチ!! オーディエンスも大喝采!であります。
Date Sep. 09. 2011
Place ISLAND Bazaar
Huntington Beach / California USA
   
Band Member
Ukulele Benny Chong
Jazz Base Byron Yasui
Guest
(Ukulele & Vocal)
Bill Tapia

line

arrowトップページに戻る

 

©T.KUROSAWA & CO.,LTD All Rights Reserved.