Vol.2 自分を表現するベストな音
弾きながら感じる作り手の情熱
ウクレレピクニック・イン・ハワイ2010ではPALIや関口和之さんらとサザンオールスターズの「勝手にシンドバッド」を演奏し、会場を沸かせた。 |
――デビューアルバムではさまざまなスタイルの曲をウクレレで演奏しているカレイさんですが、デビューまではどんな道のりでしたか?
「16歳の頃に地元のフェスティバルで演奏したんですけど、ステージを降りるとアラン・キムラというプロデューサーから『CDを作ってみないか』と声をかけられたんです。ウクレレを始めてからずっと自分のCDを作るのは大きな夢だったので、本当に嬉しかったです。でもその日からこのデビューアルバムが完成するまでかれこれ5年かかりました。まず2年間スキルを磨き、もっと音楽を勉強してからCDを出そうということになったんです。だからその間もワークショップに参加して練習をしていました。そして18歳で初めてスタジオに入り、21歳になってやっとアルバムが完成したんです」
――長い年月と想いが込められたデビューアルバムになったわけですね。CDを作ることが決まってからはどんな練習をしていたんですか?
「ソロのミュージシャンはどんな楽器でもそうでしょうけど、一人できちんとビートを刻まなければいけないので、曲をいくつか選んで、毎日メトロノームに合わせてそれらの曲を弾くんです。それはとてもハードな練習でした。メトロノームは寸分の狂いもない完璧なビートですから、どんなミュージシャンとセッションするよりも難しい。同じ曲を2年間ずっとメトロノームと弾いていました」
――曲はどんなふうに選んだのですか?
「16歳の時に『この曲をやるぞ!』と決めて、2年間ずっと練習した曲です。とにかく好きな曲ばかりを多めに選んで、その中からアルバムに合う曲を最終的に残しました。それぞれの曲を違うタイプのものにしたかったので、それぞれ違うスタイルの曲なんです。オリジナルは全11曲のうち半分。ウクレレを練習しながらかいた曲です。僕が住んでいるハワイの自然や景色からインスピレーションをもらってかいた曲ばかりです」
――全部カマカウクレレで弾いているんですか?
「1曲だけ僕のセカンドウクレレである4弦のウイラニを使っていますが、それ以外はすべてカマカです。ケイシー(カマカ社カスタム担当者)から借りたウクレレでした」
――あなたが今弾いているカスタムカマカは?
「これは僕のサードウクレレです。ウクレレギルドでディスプレイされていたカマカのウクレレを見て、弾いてみたらすごくいいんです。僕が何度も何度も弾くもんだから、友達がカマカファミリーを紹介してくれたんです。みんなすごくいい人たちで、すぐに仲良しになりました。それでレコーディングの時もウクレレを借りたり、最終的にはこのカスタムカマカも手にすることができました」
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カマカのカレイ・ガミアオ・モデル。スプルース・トップとブラジリアンローズウッドのサイドバックというコンビネーションにより、サスティーンが長く低音が豊かなサウンドを実現。ウクレレというよりもミニ・ギター的発想で作られたモデルだ。フレットが太いため一音一音がはっきりと力強く響く。 |
――そのカスタムカマカはどんなふうにオーダーしたんですか?
「レコーディングで借りていたカマカウクレレがとにかく素晴らしくて、パーフェクトだったんです。ブラジリアンローズウッドのウクレレなんですけど、気に入って同じものを作ってくれるようにお願いしたんです。できあがるまで待っている間の3年間は、レコーディングで使ったウクレレをずっと借り続けていました(笑)」
――ほぼ同じスペックということですか?
「ちょっとだけ違います。借りていたものはトップがスプルースでローズウッドのサイドバックなんですが、スプルースがイングルマンでした。作ってもらったものはシトカスプルースでできています。カッタウェイを入れて、ヘッドもスロッテッドヘッドにしてもらったので、ちょっとアップグレードしていますよね」
――こだわった部分は?
「僕からは音へのこだわりだけです。シトカスプルースとブラジリアンローズウッドという組み合わせの音がすごくいいんです。でもベアクロウ(縞模様の杢)のシトカという見た目も素晴らしいですよね。自分はプレイヤーだから細かいことはわからないので、たとえばフィンガリングを速くするためにフレットを太くしたりなど、ケイシーのアドバイスをもらいながらスペックを決めていきました」
――カマカウクレレのどんなところが好きですか?
「サウンドがとにかく素晴らしいです。100年近くも続いているブランドの、長く続く理由はそこにあって、品質と音が圧倒的にいいんです。もうひとつは作り手のハートが入っていること。カマカウクレレを弾いていると製作家の情熱を感じることができる。プレイヤーはただ作られたものを弾くだけじゃなくて、弾いたウクレレから何かを感じるんです。カマカにはそれを感じることができるから、ずっと弾いています」
――音は具体的にどう素晴らしいんですか?
「フル(音が太い/ヴォリュームがある)なんです。それに鳴りがあってサスティーンが長い。他のウクレレもいろいろと試しましたが、音が消えてしまうものも多いんです。でもカマカは太く残るんですよ。バランスもいいし、すべての面においてとてもいい音なんです。音楽を通して自分を表現するためにベストな音がカマカにはあると思います」
――ウクレレを弾くうえであなたが大切にしていることは?
「ステージでいつも心がけていることはとにかく楽しむことです。自分が楽しんで聴く人が楽しむ。そうすると笑顔が生まれる。それがウクレレの一番のいいところだと思っています。ウクレレって“完璧に弾かなければならない”というプレッシャーがないんです。リラックスして楽しんでこその楽器ですよね。だからとにかく楽しむことが一番ですね」
――今後どんなプレイヤーになりたいですか?
「ウクレレを弾いて世界中を旅したいです。ウクレレは単にフラの伴奏だとかジャカジャカとコードを弾くだけの楽器ではなく、いろんな音が出せるし、いろんな音楽を奏でることができるということをたくさんの人に伝えたいと思っています。このウクレレの楽しさをみんなとシェアしたいですね」
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