Vol.3:
ウクレレは何より作曲に向いている。
ウクレレから生まれるのはシンプルで印象的なメロディ
――最近はウクレレが単体でフィーチャーされたり、ウクレレが主役の音楽は多いですけど、アンサンブルの中でウクレレが使われている音楽って少ないなぁって思うんです。
「それがね、最近はあまりないんですけど、実は60~70年代前半までの音楽はヒットポップスの中に軽くウクレレが入っていたりするんですよ。探すとけっこうあるんですよ。僕もウクレレの音がたくさん入った音楽ももちろん好きですけど、アンサンブルの中のウクレレにはすごく可能性を感じますね。バンバンバザールはもろにウクレレというトラックも作りますけど、そうじゃなくてパッと聴いただけではわからないくらいにウクレレを弾く曲は多いですよ」
――そういう使われ方がされれば、ウクレレ自体がもっとスタンダードになると思います。ウクレレしか弾いたことのない人よりも、ギタリストがウクレレを弾く方が普通じゃないかと思うんです。ギターとウクレレがセパレートしていることが不自然な気がするんですよね。
「何よりもウクレレは作曲に向いていますよ。限られていることと、独特なコード感があるので、生まれるメロディが変わってきて新鮮なんです。それにウクレレで響くメロディは印象的なものでないとコードの中に埋もれちゃうんですよね。ヴォイシングの響きの独特な空気感が強いので、いいメロディじゃないと抜けてこないというか、印象に残らないんです。複雑なテンションが含まれているメロディはきれいに響かないので、やっぱりシンプルなメロディがいいんです。古いジャズやスタンダードとウクレレの相性がいいのは、そういう理由だと思います。古くから残っているスタンダードソングはシンプルなんですよ。シンプルだからスタンダードになっているわけで、そういう曲と相性がいいんですよね」
――名曲がウクレレでカヴァーされるとすごく気持ちいいのはそういう理由なんですね。
「僕もそうですけど、今シンガーソングライターで、家でウクレレを弾く人は増えていますよ。表で言わないだけで。普通に音楽をやっている中にウクレレがあったらかっこいいですよね」
ウクレレを知って、ギタープレイも変わった
――バンバンバザールのメンバーはウクレレに対して何て言っているんですか?
「やっぱり作曲にもいい影響があるし、ギターでやっていたら当たり前のことがウクレレでやると可愛く聴こえるので面白いって言ってますね。だから今はバンバンバザールのライヴはギターもウクレレも弾くのがほとんどですよ」
――福島さんのバリトンウクレレはチューニングも違うんですよね?
「そうですね。ソプラノが2本あってもそんなにサウンドしないですからね。それに僕がウクレレを弾く時には、彼はほとんどギターですよ。ウクレレとウクレレよりもウクレレとギターなんですよね。ハワイのバンドの演奏を聴くとだいたいエレキベースとオベーションとウクレレですよね。これがスタンダードなんですよ。それで福島くんはオベーションを買いましたね~(笑)。去年のウクレレ・バンバンバザールのツアーでは彼はオベーションでした。ウクレレばかりで演奏することが見た目的にはハワイアンなのかなぁ、って思ったりしたんですけど、実際はギターがあってウクレレがある方がいいサウンドになるんですよ。ギターとウッドベースとソプラノウクレレ」
――そのアンサンブルがいいですよね。
「ブルームーンカルテットというバンドもやっているんですが、それはトランペットの変わり種でルイ・アームストロングが使っていたコルネットという楽器とウクレレのツイン・リードなんです。ウクレレでバッキングもしますけど、コルネットと一緒にテーマを弾いたりハモらせたり。ウクレレとコルネットとウッドベースとドラムのインストバンドなので面白いですよ」
――コルネットはトランペット界のウクレレという感じですもんね。
「そうそう、ちょっと可愛いんです。ドラムは大きいセットじゃなくて、ジャズセットというか、小さいやつです。キックのサイズなんか16インチ」
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下北沢BAR? CCOで行われたブルームーンカルテットのライヴ。ウクレレとコルネットの掛け合いが気持ちいいので、ぜひ体験してください! ニューオリンズの古いナンバーを中心に、「恋におちて」、「そして神戸」、「ランバダ」などナイスな選曲で楽しませてくれました。 |
――どういうきっかけで始めたんですか?
「ブラック・ボトム・ブラス・バンドのコルネットを吹いているコーくん(黄 啓傑)と、ドラムのオージくん(木村純士)とセッションして遊ぶうちにライヴをやるようになって、ライヴが増えてきたのでバンド名を付けたんです」
――なぜウクレレにしたんですか?
「最初はギターだったんですよ。でもなんか普通でね……。そういう普通の音から連想して持ち寄る曲もいま一つ面白くなかったんです。それで普通にやったときに可愛く弾けるものはないかなぁと思って、シャレで持っていたウクレレを弾いたんです。そしたら『それいいねぇ~』ってなったんで、最初は何曲かだけ使っていたんですけど、気が付いたら全部ウクレレになってました。あまり意識することなく勝手にそうなっていたんです」
――ブルームーンカルテットではどんな音楽をやっているんですか?
「古今東西の音楽いろいろですね。始めて1年くらいで、今のところ趣味でやっているバンドなんですけど、意外とお客さんに好評なんですよ」
――富永さんにとってけっこうウクレレは大きい存在じゃないですか。こんなバリバリのギタリストで何でも弾ける人がウクレレという楽器ひとつでガラリと変わるんですね。
「めちゃめちゃ大きいです。そうなるとギターもまた変わってくるんです。頑張り過ぎないようになりました。頑張り過ぎてるものってセカセカしちゃって人の心が安らがないと思うんですよね。客観的に他人のプレイを観ているとわかるんですけど、自分がギターを弾いているときはプロ魂というか真面目過ぎる部分が嫌な感じで出ていたのかなぁ、ってウクレレを弾くようになってから思いましたね。ギターを弾く時もちょっと抜くというか、弾かない部分を作ってみたりとか、高いコードで跳ね気味で弾いてみたりすることもあります。逆にギターの低音弦の部分はウクレレにはない魅力ですから、ギターを弾く時に低音弦を弾くことが増えました(笑)」
――弾いてみてどんな印象ですか?
「すごく強そうですね。僕の好きなタイプです。ギターもそうなんですけど、最近トップの材をすごく薄くして最初から鳴るようにしている楽器がすごく多いんですよね。そういう楽器は弾いているうちにどうなっていくのか全然見当が付かないんですけど、この現行のカマカは“今から弾きこんでいくんだ”という感じがすごくします。音の密度がキッチリ詰まってますね」
――そう、まだ音の立ち上がりが遅いんですけど、音が太いんです。
「これは枯れていっても太さは残ると思いますよ。僕はまだ生粋のウクレレ弾きじゃないですけど、カマカはウクレレの王道じゃないですか。でも普通にピックで弾いたりもできそうですよね」
――お使いのNUTSCOはマホガニーですけど、比べてどうですか?
「コアはやっぱり独特ですよね。サスティーンは短いし、意外とテンションが高いですよね。僕はテンションが高いものが好きなのでアキーラという弦を張っているんです。この弦はアキーラじゃないけど1弦と2弦に張りがあって弾きやすいですね」
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