Vol.2:
ハワイへ、ウクレレ巡礼の旅。
ひたすらアンティークショップ巡りの日々
―――ウクレレを求めてハワイに行ったきっかけは?
「1993年か94年のことですが、ウクレレ・フェスティバルというイベントが7月の最終日曜日にワイキキのカピオラニ公園であるということと、ハワイ島にハーレー・ダヴィッドソンとウクレレを一緒に売っているお店がある、ということで(笑)、その二つを見てみたいと思ったんです。結果的に後者はデマの情報だったんですけどね(笑)」
――ごっついハーレーと、かよわいウクレレではすごいギャップですね(笑)。
「行ってみたら同じモールの中にハーレーの店とウクレレの店があっただけのことだったんです(笑)。まぁ、そんないろいろな情報をもとにハワイに行ってみようと思ったんです。ハワイ島ではセカンドハンドショップにマーティンやカマカなどのウクレレが普通においてあるんですよ。意外と楽器屋さんにはあまりなかったんです。あの頃カマカは店頭で見かけない時代で、マウイ・ミュージックの安いウクレレがおいてあったくらいです。それで、どこの町や村にも1件はあるセカンドハンドショップやアンティークショップを、掘り出し物を探して回ったんです」
――オアフ島よりもハワイ島の方が掘り出し物が多そうですよね。
「それでハワイ島に行ったんですけど、ビッグ・アイランドと呼ばれているだけあって、途方に暮れるほどハワイ島は広いわけです。西のカイルア・コナから東のヒロまで車を飛ばしても優に3時間はかかるんです。その頃はまだ日本からの直行便もなければ、ハワイ島専用のガイドブックもなかったので、予備知識がまったくなく、点在する町や村をひとつずつ車で回るしかなかったんです。でも今考えるとそれが楽しかったんですけどね。アンティークショップでフリーペーパーをもらって、載っている店を探して行ってみたり、行った店の人がウクレレがある店を教えてくれることもあったし。一日中観光しながらウクレレを探すというお気楽ながらハードな旅をしていたんですよ。あるときは3時間ドライブして、やっとヒロの町で目当てのウクレレを見つけたんですが、お金が足りず、また次の日に同じ道を往復したこともあります(笑)。そんなときに限ってオープンカーなのに雨が降ってきたりして(笑)」
――弱り目に祟り目ですね(笑)。
「でも街灯がない道なので、雨が止むと満天の星空だったりするんですよ。星がこぼれ落ちてきそうな感じなんです。当時ヒロのダウンタウンはハワイ州第二の都市ではあるものの、あきらかにさびれていて、昭和30年代の日本のような懐かしさが漂っていたんです。ダンプと呼ばれる町のゴミ捨て場から見つけてきたものばかりを売っているアンティークショップなどは、なぜかその後何度も足を運ぶようになったりして……」
ウクレレからハワイの音楽・文化・人へ
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カマカ・パイナップル・オールド owned by 関口和之 |
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――これ(関口さんがはじめて手に入れたカマカのパイナップルウクレレ)はどこで手に入れたんですか?
「これもハワイ島のアンティークショップだったと思います」
――これを見つけたときの気持ちはどうだったんですか?
「カマカのパイナップルがあるのは知っていたんです。ただコンディションが良いものがなかなかなくて、それにコンディションが良くてもそのときのお財布事情があったりして(笑)、買えないこともあるんです。でも手に入れたってことは、これがぴったりだったってことですよ」
――その店においてあるということを調べてから行くんですね。
「『ここに行けばまずある』っていう目星はつけます」
――そうだとすると、見つかるかわからないから、ワクワク感も不安も両方あるわけですね?
「店に入って、まず何がおいてあるだろう? ってなんとな~く探るんです。あのドキドキ感といったらないですね(笑)」
――まっすぐ見るのは怖いから、なかなか目当ての方を見なかったりして(笑)。わざとウクレレ以外の方から見ていったり。
「そうそう(笑)。そうやって、ドキドキしながら一軒一軒探していくのが楽しかったんです。アナログ・レコードも集めていたんですが、ライル・リッツやCD化されていないオータサンのアルバムなどを探して中古レコード屋も回ったんです。無造作に段ボール箱がおかれていて、そのまま積み上げられたレコードの山から一枚一枚探して、ジャケットをめくっていた手が真っ黒になっていたり(笑)。そうやって、中古レコード店やアンティークショップでウクレレ物ばかりを探していたんですけど、そのうちハワイアンミュージックのジャケットの美しさに目を奪われることが多くなり、ハワイのデザインにも興味を持つようになったんです」
――そうやって日に日にハワイにはまっていったんですね。
「セカンドハンドショップにはポイ・パウンダー(タロイモをたたいてポイを作る石の道具)などハワイの伝統的な生活道具などもおいてあるんです。店主に道具の話を聞いたりしているうちに、ハワイの文化に興味を持ちだしたんです。ハワイアンミュージックの気持ちよさも感じるようになって、どんどんはまっていきましたね。ハワイはなにより人がいいですし。ハワイの人たちって、ハワイアンミュージックに象徴されるように、心にゆとりがあるんですよね。細かいことは気にしないというか、無理はしないというか(笑)。ハワイで車を運転していると、朝や夕方のラッシュ・アワーはけっこう混雑するんですよ。そんなときでもトラックの若い兄ちゃんが道を譲ってくれたりするんです。その笑顔がまた良くてね。『あー、譲られてしまった。自分はまだまだだな』と反省したりするんです(笑)」
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