金沢21世紀美術館では2012年5月から2013年3月17日まで「Aloha Amigo! フェデリコ・エレロ×関口和之」と題し、音楽と美術の世界が融合する展覧会を開催しています。その展覧会の特別イベントとして、金沢のウクレレファンが集まり、ステージで演奏を繰り広げる「Aloha Amigo! ウクレレサミット」が8月26日に開催されました。
金沢市は芸術や音楽など文化活動が盛んな都市として知られています。ウクレレを愛する人も年々増えているそうで、2011年には「ウクレレサミット」というイベントが初開催され、北陸のウクレレプレーヤーが金沢に集結しました。
2012年は関口和之さん、フェデリコ・エレロさん、金沢21世紀美術館、地元のウクレレファンが手をつなぎ、「Aloha Amigo! フェデリコ・エレロ×関口和之」というプロジェクトがスタートしました。フェデリコ・エレロが作りだした色彩豊かな造形空間のなかで、誰でもウクレレを楽しめるという企画です。ウクレレ未経験者も含めた金沢の若者たちが美術館の企画意図に賛同、集結し、来場者にウクレレを教えるなど、展覧会を美術館と共につくり上げています。視覚芸術の場として捉えられることの多い美術館に、音楽や他者と関わる活動を取り入れ、五感すべてで感じ、表現することの豊かさを体験できるプロジェクトなのです。そのプロジェクトの一環として、ウクレレサミットが金沢21世紀美術館の野外スペースで開催されることになりました。
芝生の上に作られたステージの上で、メンバーに加えて、地元のウクレレファンたちが次々と演奏を繰り広げます。強い日差しから逃れるため、観客は木陰に座ったり、ときには美術館内で涼んだりと、終始のんびりリラックスムードで進んでいきます。
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今回のプロジェクトのために結成されたAloha Amigoのみなさん。「幸せなら手をたたこう」を振り付けとともに演奏。 |
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金沢社会保険病院の看護師、薬剤師、保健師、医師が集まって結成したウクレレサークル、ウクレレ隊。 |
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会場には地元の楽器店や雑貨店、飲食ブースなどが並んでいます。アロハな柄を施した石川県の伝統工芸・九谷焼も! |
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美術館内の展示室では「ウクレレフリーステージ!-誰でもウクレリアン-」が開催されており、Aloha Amigoのメンバーが来場者にウクレレを教えています。 |
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このイベントに向けて新たに結成されたジュニア・ウクレレ・オーケストラ。「森のくまさん」などを楽しく披露してくれました。 |
「Aloha Amigo」や「金沢ウクレレオーケストラ」のリーダーであり、金沢のウクレレ活動の中心人物、藤本美和さんに話を伺いました。
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Aloha Amigo/金沢ウクレレオーケストラのリーダー藤本美和さん |
――ウクレレサミットというイベントを始めたきっかけは?
「1回目は昨年、金沢市民芸術村で開催しました。数年前に芸術村での「ウクレレの輪」というプロジェクトのために金沢ウクレレオーケストラを結成し、40人程度で活動していました。初心者が半分、2~3年の経験者たちが半分でした。そのプロジェクト自体は終了したんですけど、オーケストラは続けたいという声が多かったのでサークル化して、今年で4年目になります。普段は金沢市民芸術村を拠点に活動しています。私たち以外にもウクレレサークルがいくつかあるし、ウクレレファンがどんどん増えてきたので、金沢でウクレレイベントをやりたいと思うようになったんです。仙台とか熊本とか、いろんな都市でウクレレイベントが継続して開催されているので、金沢もそのひとつになれたらいいなと思います。ウクレレは手軽に始められて音楽を楽しめるという魅力があるので、一家に一本くらい金沢に浸透していけばいいと思っています。今年は金沢21世紀美術館が関口さんに焦点を当てた展覧会を開催するということで、以前に開催したウクレレサミットをひきつぐ形で『Aloha Amigo! フェデリコ・エレロ×関口和之』展ならではのウクレレサミット開催へとつながりました。来年も再来年もウクレレサミットを開催していきたいです。みんなの気持ちは強いですよ!」
――Aloha Amigoプロジェクトのきっかけは?
「金沢21世紀美術館でウクレレと美術を絡めたプロジェクト型展覧会をするにあたって、関口和之さんは地元のウクレレファンと交流して、地元の人々と一緒に行うプロジェクトにしたいということでした。それで私にも声がかかりました。美術館の企画に賛同した46名のウクレレファンが集いましたが、私はそのメンバーたちをまとめるリーダーとなりました。メンバーは来場者にウクレレの弾き方を教えたり、一緒にプロジェクトをつくり上げています。さらに今回のウクレレサミットに向けて、子どもたちを集めてウクレレ・ジュニア・オーケストラも結成しました。やはり小さなころから音楽に触れることはすごくいいことだと思うんです。4月からのスタートで、子どもたちは普段は芸術村で練習していますが、こうやって演奏の機会をいただけるのはとても嬉しいことです。いつかみんなでハワイに行って本場の演奏を聴いたり演奏ができたらと思っています。今はまだまだですが、10年後にどんなオーケストラになっているか、楽しみです!」
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金沢ウクレレオーケストラのみなさんは日頃の練習の成果を発揮して「上を向いて歩こう」などを演奏。 |
金沢のウクレレファンのみならず、ゲストミュージシャンたちもさまざまな音楽を披露します。昨年ハワイのウクレレコンテストで優勝したJazzoomCafe、うさぎとくまの編みぐるみから始まったU900はヴォーカルを交え、またハワイアンファルセットの岡田央バンドは地元出身で活躍するフラチームNa Lei Pualani Hula Studioとともに、会場を盛り上げます。
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高速ピッキングなど超絶ウクレレで観客を魅了したJazzoomCafe。 |
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U900は彼ら独特の脱力系音楽でみんなを癒してくれました。 |
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マウイ島で開催されるファルセット・コンテストでの2005年優勝者、岡田央さんは花にちなんだハワイアン・ソングをたっぷり聴かせてくれました。 |
最後のゲストは関口和之バンド。「Tico Tico」「幸せの黄色いリボン」「Can’t Buy Me Love」と、ウクレレファンにはおなじみの曲に加え、10月にリリースするニューアルバムから、クラシックの名曲「口笛吹きと犬」にあやかって名付けたという「口笛吹きと仔馬」というお洒落で可愛らしい曲を聴かせてくれました。口笛はもちろん、口笛世界大会チャンピオンの分山貴美子さんで、その美しい音色が会場を包みます。分山さんの口笛解説を交えつつ、最後は「Bitter Sweet Samba」で観客も一緒になって口笛を吹いたのでした。
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ウクレレと口笛で観客を和ませてくれた関口バンド。 |
ステージを終えた関口和之さんに感想を伺いました。
「金沢の人々と一緒にイベントをして、ウクレレで音楽を分かち合いたいという想いがプロジェクトを始動する最初からあったので、今日は願いが叶ってハッピーです。美術館内の展示室も好評で、家族連れで来てくれるお客さんも多いんです。みんなで一緒にウクレレの楽しさに触れる体験というのがすごくいいですね。3月17日の最終日まで、まだまだ期間があるので、今後もいろんなことをやっていきたいと思います。楽しみにしていてください!」
金沢をはじめ北陸でも多くの人に愛されているウクレレ。今回のイベントを通して、ウクレレファンはすぐにつながって、音楽仲間の輪がどんどん広がっていくことを実感しました。ウクレレを通じて知り合い、あっという間に友達になり、各地でイベントが生まれています。これは他の楽器にはない、ウクレレならではの魅力です。人と人の間にある壁を取り払ってくれる力を持つ、ハッピーの象徴のような楽器ですね。金沢21世紀美術館内の展示にもその魅力は溢れています。ぜひ足を運び、五感全部で感じてみてください。
金沢21世紀美術館
石川県金沢市広坂1-2-1
TEL 076-220-2800
URL http://www.kanazawa21.jp
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フローリアン・クラール
《アリーナのためのクランクフェルト・ナンバー3》2004年
金沢21世紀美術館蔵
撮影:中道淳/ナカサアンドパートナーズ
写真提供:金沢21世紀美術館
レアンドロ・エルリッヒ
《スイミング・プール》2004年
金沢21世紀美術館蔵
撮影:中道淳/ナカサアンドパートナーズ
写真提供:金沢21世紀美術館 |
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Text & Photo:MASUMI NAKAJIMA
Design:TARO WATANABE(77GRAPHICS)
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