世界のウクレレ・フェス巡り―ニューヨーク
New York Uke Fest 2010 Report
ハワイや日本以外でも、ウクレレ・フェスは世界のいたるところで開催されています。今回行ってきたのは最先端の音楽やファッションが生まれ続ける大都会、ニューヨークのマンハッタン。この街で開かれたウクレレ・フェスティバルをレポートします。
ニューヨークで生まれた音楽といえば、モダン・ジャズ、サルサ、フォーク、R&B、ドゥーワップ、ヒップホップ…と枚挙にいとまがないが、そんな音楽の街ニューヨークでウクレレ・フェスが開かれているという。いったいどんなフェスなのか? さらに今回は102歳のウクレレマスター、ビル・タピアや、日本からも関口和之バンドが参加するという話を聞きつけた。ならばなにがなんでも行かないと! ということで行ってきました、マンハッタンへ。
初日は当フェスのメイン会場であるニューヨーク市立大学バルーク校でドキュメンタリー映画『The Mighty Uke』の上映会や監督を交えてのディスカッションが行われた。次の日は深夜コロンバス・サークルのタイム・ワーナー・センター内にあるジャズ・クラブ「Dizzy’s Club Coca-cola」にビル・タピアが登場。ギタリストのパット・エノスやナ・ホク・ハノハノ・アワードで受賞歴もあるジャズ・シンガー、ミハナらとホットで心温まるジャズ。同じジャズでもウクレレという楽器が入ると、そのサウンドは観客を柔らかな笑顔にする。それを演奏しているのが世界一キュートな102歳のビルなのだから、なおさらだ。マンハッタンの高層ビル群を見渡すジャズ・クラブが温かな笑顔に包まれた夜だった。
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Dizzy’s Clubでのグラッセラ・オリファント・セクステットの演奏。 |
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そこに特別出演したビル・タピア。彼の音楽をNYで聴くと、また格別。 |
その頃カマカちゃんは.....
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NY観光を満喫中。現在NYで最も高いエンパイア・ステート・ビルの展望台からキング・コングの気分を味わったよ! |
グリニッジ・ヴィレッジにはライヴハウスがいっぱいあるのだ。こちらはまだオープン前のヴィレッジ・ヴァンガード!
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マクドゥガル・ストリートにあるリズム&ブルースのライヴハウス、グルーヴ。ピンクの外壁にはたくさんのミュージシャンたちがグルーヴしてる♪ |
そして迎えたメイン・イベント。5月14日と15日の二日に渡り、昼間はウクレレの展示会やワークショップ、夜は二つのステージで約20組のプレイヤーたちによる演奏が繰り広げられた。会場はウクレレ・フェスらしく、のんびりとした雰囲気が満ちており、ブースではビルダーの人々がウクレレを弾きながら歌いまくっている。この“ウクレレ的ゆるい感じ”は世界共通のようだ。だがブースでのプレイや会話を聞いていると、日本やハワイよりもマニアックでコアなウクレレ・ファンが集まっているという印象を受ける。
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会場となったニューヨーク市立大学バルーク校前での関口和之さん。 |
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会場内、ホールの外にはたくさんウクレレ関連のブースが並んでいる。 |
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あちこちでウクレレセッションが始まる。 |
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フェスのオーガナイザーであるケンさん(右)と関口さん。ステージのMCも務め、プレイヤーとして演奏もするケンさんはカマカをご愛用。 |
その頃カマカちゃんは.....
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たくさんのアーティストたちが愛したチェルシー・ホテル。シド・ヴィシャスとナンシーの事件が起きたのもここ。今はホテルだけど、昔は多くの有名人が住んでいたアパートだったんだって。 |
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数々の映画に登場するグランド・セントラル駅。天井には星座が描かれていてロマンチックなのだ! |
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たくさんの人が行き交うタイムズ・スクエア。自然育ちのカマカは目が回ってだんだん疲れてきたよ……。 |
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くちぶえ吹きの分山貴美子と関口和之の合同ワークショップでは関口さんが日本のウクレレ事情を話した後、分山さんの指導のもと、みんなでくちぶえを練習。参加者は「ちゃんと吹けるイメージがあるのに、実際はなかなか音が出ない」となかなか難しそうな様子だが、奥深いくちぶえの世界を知ることができてみな満足そうな表情。IWAOのワークショップにはハワイアン・ストラミングのコツを学ぼうと多くの参加者が集まり、アメリカ人らしく質疑応答の雨あられ。積極的に参加する姿勢が日本のワークショップとは違うということをIWAOさん本人も実感したようだった。そのほかにもさまざまなワークショップがいたるところで開催され、みなが思い思いにウクレレを堪能していた。
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くちぶえのワークショップではウクレレの音色に合わせ、みんなでくちぶえを吹いた。 |
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IWAOさんのワークショップにはミュージシャンたちも参加し、ハワイアン・ストラミングを練習。 |
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ブースでウクレレを物色していたジェームス・ヒル。 |
その頃カマカちゃんは.....
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ふぅ~。大都会の中のオアシス、セントラル・パークに来ました。休日だからたくさんの人で賑わっているけど、芝生の上でくつろぐと気持ちいい。 |
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セントラル・パーク内ストロベリー・フィールズにあるイマジンのメモリアル。世界各地からそれぞれの思いを胸にやって来た人々で賑わっていました。 |
夜のライヴでは日本やハワイではなかなか見ることのできないミュージシャンたちによる演奏が次々と繰り広げられた。シンプルなソロ・ウクレレからカントリー、ニューウェイヴ、民族楽器とハイテク・デジタルツールの両方を取り入れたウクレレ音楽まで、多種多様なウクレレの在り方を目の当たりにした。さすがはたくさんの音楽が生まれ続ける街ニューヨーク。その音色はさまざまで、「ウクレレ音楽」とひとくくりにすることはできない。民族楽器のひとつに数えられるウクレレがこんなにも多くの音楽を生み出すとは。
トリのビル・タピアの演奏が終わるのは深夜0時。地下鉄が24時間走り続けるニューヨークの夜は長い。そしてライヴの後ホテルに戻ってからもセッションするミュージシャンたち。ニューヨークの夜は熱いのだ。
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ハワイから参加したジョディ・カミサト&クリス・サルバドール。彼らの速弾きに観客は大興奮。 |
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フランス出身のU.K.Eはループを駆使したエレクトロニック・サウンドにウクレレやタブラ、カホン、ウドゥといった世界各国の打楽器をフィーチャー。 |
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ウクレレとハワイアン・スティールのプレイヤー、ジェラルド・ロス(中)はベース、クラリネットとの美しいハーモニーを聴かせた。 |
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トリッピン・リリー(TRIPPING LILY)はたくさんの弦楽器でフォークやポップ・ロックを演奏。楽しいアンサンブルで魅せた。 |
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数多くのウクレレ関連本を出版していることでもおなじみのジム・ビロフ。自らプロデュースしたフルーク・ウクレレをプレイ。 |
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ハブ(KHABU:右)はウクレレやギターに加えカバキーニョ(ブラジルの小型ギター)なども弾く弦楽器奏者。この日はヴォーカル、ベースとともにユニークな音楽を披露。 |
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80年代に活躍したザ・カーズ(The Cars)のキーボーディスト、グレッグ・ホークス(中)のバンドは3人ともウクレレで登場。今はウクレレに夢中の様子。 |
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ブルック・アダムス(左)はビートルズやアース・ウインド&ファイアー、ジェネシスなどの曲をウクレレでカバー。途中からジェームス・ヒルらも参加。 |
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IWAOは繊細なハワイアンナンバーからノリのいいオリジナル曲まで、幅広い演奏テクニックで観客を魅了した。 |
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関口バンドのウクレレとくちぶえのコラボレーションに会場はおおいに沸き、「ブラボー」「マーヴェラス!」と拍手喝采。 |
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昨年来日も果たした102歳のウクレレマン、ビル・タピア。彼が歌う「Young at Heart」に会場はスタンディング・オベーション。やっぱりビルさんの存在感、すごいです。 |
バリエーション豊かなウクレレの音楽が聴け、日本やハワイからやってきたミュージシャンたちにとってもすごく刺激的だったようだ。ハワイのウクレレイベントほど大きな規模ではないが、アメリカのいたる所から集まって来た観客は、ほぼ全員が自分のウクレレを持参し、彼らが鳴らすウクレレの音がいろんなところで響き渡っている。強いエネルギーが溢れる大都会の真ん中でも、ゆるゆるとウクレレを楽しむ人々の笑顔はやっぱり素敵だった。
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関口さんらが運営するウクレレ・ファウンデーション・オブ・ハワイがその功績を讃えられ、ステージで表彰された。 |
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ビルさんと関口さんは久しぶりの再会。二人ともとっても嬉しそうでした。 |
Text & Photo:MASUMI NAKAJIMA(RAVEN WORDS'WORKS)
Design:TARO WATANABE(77GRAPHICS) |