musician's talk ウクレレを愛するミュージシャンへのインタビュー
gray-dot
Vol.1 自分を駆り立てる表現への情熱

jake shimabukuro

いいミュージシャンである前に、いい人間であること

――明日は「I LOVE UKULELE TOUR 2010」の最終日ですが、今回のツアーはあなたにとってどんなものでしたか?
「すべての人に自分のウクレレへの愛、音楽への愛、日本という国に対する愛を伝えるショーだったと思います。そして今自分の中にあるものを誠実に表現できたのではないかと思っています」

――私はあなたのライヴを観るのは初めてだったんです。もちろんこれまであなたの音楽は聴いていたし、素晴らしいプレイヤーだとはわかっていましたが、正直ここまですごいとは思っていませんでした。テクニックや音楽性の素晴らしさはもちろんのこと、とにかくハートフルなライヴで、観る人全員を幸せにしている。それにウクレレの音はよく“人を幸せにする”と言われますが、ジェイクさんのライヴを観て、その本当の意味がわかりました。
「お~、ありがとうございます」

――あなたはよく“天才プレイヤー”とか“超絶テクニック”などと言われますが、それについてはどう感じていますか?
「とても光栄ですが、自分では全然そんなふうに思ったことはなくて、ただ自分が感じることをナチュラルに演奏しているだけなんです。ウクレレを弾くことは僕にとって自然なこと。自分はよく難しいことをプレイしていると言われます。確かに難しいものに挑戦してはいるし、速弾きやテクニックを磨くことも楽しいんですけど、自分が最も大切にしていることは一音一音に感情を込めて演奏することです。シンプルな曲でも感情を注ぎ込むことによって、僕が何を感じているかということを聴く人が感じ取ってくれることが重要なんです。自分の気持ちを最大限正直に表現することが大切で、究極のゴールはどうやって自分なりに表現するか、そのすべを身につけること。たとえばチャーリー・パーカーはジャズ特有のアドリブで、あらゆる音で思うままに表現し、それを聴いた人が感動した。いっぽうブルースのB.B.キングはチャーリー・パーカーが50の音で表現したことをたった1つのチョーキングでもって同じくらいのインパクトを与えた。どちらが優れているかではなく、自分の表現方法を見つけることが大切なんだと思います。自分にとって自然な方法で無駄なことをせずに表現し、それが結果的に人を感動させることができれば、それはもっとも大きな力だと思います。だから考え過ぎたり装ったりしちゃダメですね」

――あなたのライヴを観ていると、すでに一音一音にとても感情が込められていると感じるし、緩急自在でたった一つの音を弾くだけで“ジェイク・シマブクロの世界”になる。もうあなたの目標はかなり達成できているのではないかと思いますが。
「僕が達成したことはほんの一部で、まだ発見することや学ぶべきことがたくさんあります。音楽やアートって自分が想像できるかぎりの深さまで到達したと思っても、まだそのもの自体の表面しかかすっていなかったりするのではないかと思うんです」

――技術的に天才と言われるレベルの人って、世の中には他にもいると思うんです。でも今回ツアーに密着して、あなたはその才能を人々のために使っていると感じました。それが本当の意味での天才なんだろうと思います。このツアー中、ライヴの後に楽屋で話を聞いていたとき、誰か別の人が入ってきて話が中断してしまったことがありました。そしたらあなたはそのことを気にしていて、後から謝ってくれたことがありました。そんなことはよくあることなのに、すごく人に気を遣っていて、その心遣いに感銘を受けました。あなたの人柄の良さにびっくりしているんです。以前あなたのインタビューで「すごく尊敬しているミュージシャンに挨拶したときに、そっけなくされてすごく傷ついた。だからいつか自分が音楽を聴いてもらえる立場になったら、自分の音楽に興味を持ってくれる人を絶対に大切にしようと決めた」と書いてありました。でもそれを毎日実践するのって大変だと思うんです。ところがあなたはやっている。なぜそれができるんでしょう?
「僕の哲学はすごくシンプルで、いいミュージシャンであることは二番目なんです。まずはいい人間であることが一番。シンプルなことだけど忘れないでいたいし、それによってもっといい判断ができるようになると思っています。音楽でもどんなアートでも、いい人間である前にいい音楽であることやその作品に重点を置いてしてしまうと、大切なことを見失う。音楽は人を幸せにしたり、喜びをもたらしたり、人と人をつないだりする大きな力を持っているし、世界中の誰もがわかる共通言語のようなもので、みんなをひとつにできる。だからどうやって伝えたいかということよりも、何を伝えたいのかをまず学ばなければならない。伝える人間自身が良くなければ、混乱したメッセージを伝えることになってしまうと思うんです」

――あなたはきっと素敵なご両親のもとで育ったんでしょうね。4歳からお母さんにウクレレを習い始めたとライヴでおっしゃっていましたが、お父さんはどんな人ですか?
「父は大工をしていて、木が大好きなんです。それに音楽が大好きでずっとギターを弾いていたんですけど、最近ウクレレを習い始めました。父はとても面白く、パーティーではいつもジョークを言ってみんなを笑わせ、まわりから愛されるタイプの人です」

――あなたはお父さんとお母さん、どちらに似ているんですか?
「僕は母に似ていて、弟(ブルース)は父に似ているんです」

――音楽的には両親からどんなふうに影響を受けていると思いますか?
「両親はいろんなジャンルの音楽を聴いていたので、僕の友達がポップな音楽を聴いていた時も自分は1930年代、40年代、50年代の音楽などを聴いたりしていました。だから今でも自分はいろんなジャンルの音楽が好きなんです。さまざまなスタイルの音楽を知ることができたのは両親のおかげですね」























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