musician's talk ウクレレを愛するミュージシャンへのインタビュー
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Vol.2 ウクレレ音楽を世界に広めること

sekiguchi


――3歳からウクレレを弾いてきて、ウクレレプレイヤーとしてのターニングポイントが何度かあったと思いますが、一番大きなものは何でしたか?
「24歳くらいの時だと思うけど、父との関係について叔母から言われたことがあったんです。僕が成長していくなかで、たとえば父兄参観とか運動会とか、そういうものに父は一切来てくれなかった。仕事が忙しいから仕方ないんだけど、普通の父親が当たり前にやっていることを父はしてくれなかったことが、子どもにとっては大きな問題だったんです。父に対してそういう思いがあったし、親戚などの前で演奏する時に父と比べられるというプレッシャーも感じていた。そういう時はいつも『自分は父の陰にいる』という思いがあったし、そこから抜け出したいと思っていました。そんな時、父の妹であるおばさんが僕と向き合って話してくれたんです。父がなぜ父親としての役割を果たせないのか、そこにある父の生き方や父の思いを話してくれたんです。それからは雲が消えたように心がすっきりして、他人が自分のことをどう思おうが、父の陰にいると思われようが、気にしないで自分が楽しめばいいんだと思うようになったんです。もしかしたらわがままな考えなのかもしれないけど、そう考えた方が幸せになれると思ったんです。その幸せな状態で演奏して、聴く人が幸せだと感じてくれればさらにハッピーだしね。だから彼女の言葉でいろんなことが吹っ切れたんですよ。それが精神的にも音楽的にも大きなターニングポイントになりましたね」

――素敵なおばさんですね。そのターニングポイントを経て、自分はどんなミュージシャンになろうと思ったんですか?
「自分がゴールに設定しているのはウクレレプレイヤーとして名を残すということではなく、ウクレレの音楽を世界に広めること。1990年代はよく父やほかのミュージシャンたちとレコーディングしたりして自分をプロモーションすることに頑張ったけど、ある時気づいたんです。自分の名前が広まることよりウクレレ音楽が世界に広まることが重要だと。一般的にウクレレプレイヤーはテクニックなどで判断されますよね。でも自分にとって大事なのはテクニックではなく、曲なんです。自分が演奏した曲を聴いて『素敵な曲だね。何ていう曲?』って思ってもらう方が僕は嬉しい。その方がウクレレ音楽を残していくことにつながると思うから」


2011年2月13日に開催されたウクレレピクニック・イン・ハワイ2011での親子共演。誰と演奏するのも同じ気持ちというオータサンに対し、ジュニアさんの心境は……。
――今からオータサンと一緒に演奏されますが(2011年2月のウクレレピクニック・イン・ハワイ2011にて)、ほかのミュージシャンと一緒に演奏するのとオータサンと一緒に演奏するのでは気持ちは違いますか?
「もちろん(笑)。彼は僕のウクレレの先生だし、父親だし、尊敬しているぶん、まったく違う気持ちです。ほかのミュージシャンと演奏する場合は、どんなにすごい人であっても対等だけど、父であり先生である人は対等じゃないから」

――オータサンから受け継いだものを次の世代にどんなふうに繋いでいきたいですか?
「ウクレレを教えることはずっとやってきているし、これからも次の世代にずっと教えていきたいと思っています。それはすごく大事なことだから、自分の生徒たちにも誰かに教えることを勧めているんです。そうすることで生徒たちも僕が教えることに対してより真剣になって理解してくれるだろうし、僕が教えたことがさらに広がっていくことに繋がる。より多くの人に伝われば、ウクレレは人を幸せにする楽器だから、幸せな人がもっと増えると思う。そしてたくさんの人がハワイと繋がってくれたらいいなと思います」


――これからの予定は?
「明日はカリフォルニア、木曜日はシアトル、金曜日はアラスカで演奏です。3月はアリゾナだし、今年はより多くの場所で演奏できたらいいなと思います。アリゾナで開催されるハワイ・フェスティバルには1日に6万5千人もの人が訪れるんですよ!」


――6万5千人!! それはすごいですね。では日本にもたくさんいるウクレレファンにあなたなりのアドバイスを贈るとしたら?
「いつも生徒に言うことですが、ほかの人がどう思うかなんて気にしないでください。グループで演奏するときにほかの人の演奏を気にして自分らしいプレイができない人がいるんですけど、気にしなくていいんです。自由に、楽しんでウクレレを弾いてください。それともうひとつ、人前で演奏する時はオリジナルソングをやりたがる人が多いけど、ウクレレプレイヤーとして、インストゥルメンタリストとして重要なのは、人が知っている曲を演奏するということ。これは父から教えられたことですが、多くの人に馴染み深い曲をより多く演奏できるようになることが大切なんです。父のこれまでのアルバムを見ればよくわかると思いますが、ほんの数枚の例外を除いては、ほとんどがカバー曲なんです。いい曲をウクレレで奏でることで、曲自体の魅力を再発見できるし、ウクレレという楽器の素晴らしさも伝わる。そしてなにより、みんなが楽しめますから」


Ohta-san & Herb Ohta Jr. UKULELE DUO ALUBUM
『OHANA -Ukulele Duo-』
Ohta-san & Herb Ohta Jr.
(VICP-63439)
オータサンとジュニアの共演アルバム。全曲ウクレレ・デュオ演奏で、使用される楽器は2本のウクレレのみ。収録曲はすべてハワイアンソング。タイトルの「OHANA」はハワイ語で「家族」の意で、その名の通り根底に親子の絆が感じられる傑作。


冗談を連発し質問をはぐらかすオータサンと、一言ずつ丁寧に答えるジュニアさん。性格の対比も面白い素敵な親子。大切なことはしっかりと伝えられ、受け継がれていた。





















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