musician's talk ウクレレを愛するミュージシャンへのインタビュー
gray-dot
Vol.1:
弾けないのに引き受けたレコーディング。


sekiguchi

きっかけは『ウクレレ ビートルズ』

――富永さんはバンバンバザールに加入する前からウクレレを弾いていたんですか?
「ウクレレを弾き始めたのはバンバンバザールに入ってから。つい5年くらい前なんです。きっかけはローリング・ココナッツが編集した『ウクレレビートルズ』(ジェネオン エンタテインメント)というアルバムの制作に声をかけていただいたことなんです。ウクレレでビートルズの曲をやるのは面白そうだから、二つ返事でOKしたのはいいんですけど、僕はウクレレを持っていないし、弾いたこともなかったんです。急いでドン・キホーテに行って数千円のウクレレを買いました(笑)。どんなチューニングなのかも何も知らない状態で、周りの人に教えてもらって弾き始めたんです。だから不謹慎かもしれないけど、最初は自分で弾きたくて弾いたわけじゃないんですよ」

――ローリング・ココナッツは富永さんがウクレレを弾いたこともないことを知らずにオファーしたんですかね?
「以前福島くん(ヴォーカル&ギター)を『ローリング・ココナッツ』の表紙のモデルに、という取材があったんです。その時にインタビューで、『福島さんはウクレレを弾くんですか?』って聞かれて『ええ、まぁ、家でポロリとね』みたいなことを言ったみたいなんですよ。確かに彼はバリトンウクレレを持っていたけど、僕は弾いているところは見たことなかったですけどね(笑)。だからオファーが来たんだと思います。そのアルバムでは『Please Please Me』をやりましたけど、それまでは自分たちが作った曲をアレンジするとか、自分たちが好きなものを選んでカヴァーすることが多かったんです。ところがその時は『ビートルズの曲をカヴァーしてください。候補曲はこんな感じですが、どうですか?』と注文されて縛りができちゃったわけです。選りすぐられて提示された曲の中から僕らに合いそうなものを探して考えていくというのが新鮮で、そこから得たものが多かったので、みんなどんどん興味が湧いていきましたね」

――富永さんは『ウクレレ・マガジン』などにも「ずっと前から弾いてました!」みたいな感じで出ていますよね(笑)
「申し訳ないんですよね。ウクレレの古典的な奏法だとかは一切知らないんです。ウクレレは“ギターの音程が高いバージョン”という感じで弾いてます。もちろん素晴らしい達人たちのプレイを聴いたりして影響は受けていますけど、基本はあまりウクレレの知識はないです。ウクレレの音楽に関しても、もちろんハワイアン・ミュージックを聴いたこともありましたけど、福島くんの方が詳しかったんじゃないですかね。僕はアーバン・サイドだったので(笑)、全然知らなかったですね」


――1曲やってみてどうでしたか?
「ウクレレを前面に出すというより、笑いを前面に押し出したようなアレンジで(笑)事無きを得たんですけど、やっているうちにウクレレがちょっとずつ弾けるようになってくるから、そのうち『ウクレレでジョン・レノンです』とか『ウクレレビートルズ2です』とか一連のウクレレシリーズのコンピレーションCDにほぼ毎回声を掛けていただいて、やっていくうちにどんどんウクレレ寄りなバンドになっていきましたね(笑)。僕もそれから先はどんどんウクレレの面白さがわかってきたから、今こうやって続けているんですけどね」

――ドン・キホーテでウクレレを買ってから『Please Please Me』をレコーディングするまでどのくらい時間はあったんですか?
「1週間くらいですかね」

――すごいですね。そのウクレレでレコーディングしたんですか?
「そうです。なんかベニヤ板でできているウクレレでしたね」

――チューニングは大丈夫だったんですか?
「チューニングが合わないとか言う以前に全く弾けないですからね(笑)。その時の僕にはちょうど良かったんじゃないですかね」

――(笑)。弾けない楽器でレコーディングするなんて、初めてだったでしょう?
「そうですね。僕はギターを弾く時、形じゃなく音で覚えていたので、あまり変則チューニングをやったことがなかったんです。だからレギュラーチューニングに対して“弦楽器のチューニングはこういうものだ”という印象が強いから、ウクレレがギター5カポのチューニングと一緒だと言われても、理解できなかったんです。半年くらい経ってやっと『あっ!! これがそうか』ってひらめいたんです。ロックとかニューウェーヴとかのバンドではエレキで上の方のフレットで代理コードを弾いているけど、それと一緒だ、とわかったんです。半年かかりましたね(笑)」

――ギターを弾いてきた人がウクレレのコードを別モノとして覚えるのは大変ですもんね。
「僕もギターとは別モノとして覚えていって、半年してやっと繋がったんです。そこからはすんなりできるようになりましたね」

――弾き始めは福島さんの方が弾ける感じだったんですか?
「そうですね。で、真似しようと思ってみたら福島くんが弾いているのはバリトンウクレレだから、ギター開放の1~4弦と一緒なので全然参考にならなくて(笑)」

――福島さんはズルイですよね(笑)。
「ズルイですね。ギターのまんまですからね。だから結局僕の負担が常に多い半年でしたね」

レパートリーは1曲

――ウクレレでライヴに至るにはどんなことがありました?
「そのCDがリリースされてすぐに『ウクレレビートルズCD発売記念ライヴがありますので、ご出演いただけますか?』と言われまして……ヤバい!!! とすごく焦ったんです。僕はギターを弾く時はやっぱりジャズがベーシックにあるので、アドリブだとかフィーリングで弾ける部分が多かったんですけど、ウクレレに関してはレコーディングした1曲の、自分のパートのみを作って、それを自分で完コピして弾いているみたいな感じでしたから、それ以外はまったくできなかったんです」

――その1曲しかレパートリーがないわけですもんね。
「まぁそれから練習しましたし、ライヴでは当時の僕でも比較的弾きやすい曲を選んで20~30分くらいのステージをやらせてもらいました。それがすごく面白かったんですよ」

――どんな曲をやったんですか?
「バンバンバザールで演奏する時は特にハワイアンの曲をやるということはないんです。ウクレレ用に特別な曲をやるのではなくて、普段やっているレパートリーをウクレレでやるだけなんです」

――リハーサルは富永さんが戸惑うリハーサルだったんじゃないですか? 普段とは全然違う富永さん(笑)
「そうですね。バンドの中で明らかに地位が変わりましたね(笑)」


――バンバンバザール歴は当時黒川さん(ベース)が一番浅かったわけでしょう? それが富永さんが一番下手くそに(笑)。
「ボトムを味わいましたね(笑)」

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Home Work Café

東京都世田谷区太子堂2-4-11 
TEL&FAX 03-3410-1505
URL http://www.ban-ban-bazar.com/hw/page/cafe.html
※営業時間・定休日は電話で要確認


ジャンプ、ジャイヴやジャズのヴォーカルものを中心にバンバンバザールのメンバーがチョイスしたレコードをナイスなプライスで提供するカフェ。さまざまなルーツの香りのする音源が小さな店内にあふれている。HOME WORK RECORDよりリリースされたCD、バンバンバザールの全アイテム(CDやグッズ)もすべて取り揃えてあり、ここでしか買えないものもある。店内ではレコードをかけてゆっくりとコーヒーやお酒を飲みながらくつろぐことができる。


お店にいるのはバンバンバザールのアイテムのデザインを手掛けているアート・ディレクター南さん。ボンバーヘアが目印。






















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