musician's talk ウクレレを愛するミュージシャンへのインタビュー
gray-dot
Vol.3:
感じた後には考えること。


sekiguchi


二人にとって書くこととは

――アルバムを通して、クリスさんの言葉には統一感がありますよね。
クリス 「やっぱり行って感じたことが優先なので、おのずとひとつの点に近づくようなものになっていったんだと思いますね。漠然と思っていたことが集約されたんでしょうし」

――個人的には「悲しみのない世界」の「忘れてしまえ 何も失くしはしないのだから。」という歌詞はおおはたさんの詞の世界にも通じるものがあるし、すごく強く響いたんです。芯に強いものを感じるので、ハワイの風景にも通じるものがありますね。
おおはた 「クリスさんの書くという動作が、まるで文字を彫っているかのように見えるんですよ。僕はあまり字が書けないんです。たとえば “こんにちは”って一瞬にして書けたら自分でも書くと思うんだけど、一文字一文字に自分のスピード感が合わなくて、書いていられないんです。だったら弾いちゃった方が早いと」

――この記号でおおはた君は“こんにちは”と言っています。
クリス 「それ危ないですね(笑)」
おおはた 「だからものを書く人には憧れがあるんです」

――じゃあ作詞は大変な方ですか?
おおはた 「いや、書き留めないで弾きながら歌っちゃうので大変ではないです。だから自分が歌った歌詞を文字として見るとちょっと違和感があるんですよ。初めて自分のCDができたときに歌詞カードを見てびっくりしたんです。こういうことか! って。だから自分の中での歌詞のイメージと文字になった歌詞に距離があるんですよ」
クリス 「他人が書いたものに曲を付けるのは大変じゃないですか?」
おおはた 「それがまた面白いんです。もう言葉があるわけだから、それを自分の中でアレンジしていくのは面白いんですよ」
クリス 「私は逆に書く方から入っているので、私の作った詞は歌詞じゃなくて読む詩っぽいんですよ。音楽に乗せるって、結構違うんだと実感しましたね」
おおはた 「クリスさんは端折らないですよね」
クリス 「端折った方がいいことっていっぱいあるのにね(笑)」


“考えるな、感じろ”の真の意味

――二人のライヴで聴いたワイゼンボーンの音にはしびれましたね。おおはたさんならではですよね。
おおはた 「ワイゼンボーンもウクレレもそうですけど、何かすごく伝わってくる楽器ですよね」


――カマカのウクレレって、コアで作られているんですよ。おおはたさんのワイゼンボーンもコアじゃないですか。コアの音の響きが、その世界を作っているのかなと思いますね。
おおはた 「僕はめっちゃコア好きなんです。何でしょうね、木目も美しいし、その土地に合った木だからなのか……」

――おおはたさんがもしワイゼンボーンを弾く人でなければこのアルバムは全然違う作品になったでしょうね。もちろんアコースティックギターをメインで弾いているんですけど、スライドギターを使うミュージシャンだったからこそ、あのアルバムの音の世界ができあがったんですよね。クリスさんの声もなんだかすごくいいんですよね。
おおはた 「クリスさんみたいな声、なかなかいないんですよね。ほかのミュージシャンだったら、みんなきっと、もっと歌っちゃうんですよ」

――二人の曲は聴き手に寄った感じがしないですよね。「感じてくれるでしょう」と聴く人に委ねるような。
おおはた 「聴き手に全部任せるんじゃなくて余白を残しておくような作り方は好きですね。最近すごく思うんですけど、物事を考えなくなってきている。みんなブルース・リーの教えを間違っている気がするんですよ。“考えるな、感じろ”。今の時代、感じることばかりで考えることを忘れている気がするんです」

――今回ハワイに行ったのは“考えるな、感じろ”の世界でしょ。でも感じた後考えているわけで、感じることと考えることは繋がっているんですよね。
クリス 「そう、感じることと考えることが繋がっているとすごく代謝がいいというか、生きていて気持ちがいいですよね」
おおはた 「今はすぐわかんないって言われちゃう時代のような気がして、わからないで終わりだと寂しいですよね」
クリス 「わからなくてもいいんだけど、なぜ自分がわからないかを考えたり、自分がわからないことを知ることで自分が思っていることをわかってきたりもします。その時間を作ってちゃんと考えていきたいですね」

インタビューを終えて

おおはた雄一とクリス智子の音楽の世界に
『ウクレレ時間』に通じるものを感じた。

ウクレレをポロンと鳴らすと時間の流れが変わる。
ハワイの時間でもなく、日本の時間でもない。
ウクレレがくれる魔法の時間。
それは、誰もが心の中にもっている心地いい時間。


 (フリーペーパー『ウクレレ時間』より抜粋)


ふたりのアルバム『lost & found』にはやさしくゆるやかで、確かな時間が流れている。そして、心を癒してくれたり、許してくれたり、時には大切なことを教えてくれたりもする。目には見えない、大切なことを。

音楽は人生に色を添えてくれる。
人が音楽や楽器を楽しむということは、
無色な時間に自分の好きな色を塗るようなことかもしれない。
鮮やかな色だったり、パステルのやさしい色だったり、いろんな色が混ざり合っていたり。

クリス智子は「音楽で日常のすべての風景を自分から同じにしようとは思わない」と言った。
音楽、特に思い入れのある曲は私たちの感情に強く作用する。聴く者の心に楽しい思い出も、ドキドキする興奮も、切ない気持も一瞬にして湧き上がらせる。
それが音楽の素晴らしいところであり、ときに感情をコントロールされるようで怖いこともある。それくらい、音楽の力は強い。

ふたりのアルバム『lost & found』に収められている8つの曲は、聴く人の時間にどんな色を添えるのだろう。

彼らが語るように、感じて、自分を重ね合わせて、考えてみたい。


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