musician's talk ウクレレを愛するミュージシャンへのインタビュー
gray-dot
Vol.2 父と息子、それぞれのスタイル

sekiguchi


――息子さんが小さい頃はウクレレを教えたんですか?
「息子が3歳のときに教えはじめて、彼は4歳で譜面も読めてちゃんと弾けるようになったの。僕の奥さんは熊本出身の人で、僕が海兵隊で日本にいたときに領事館で結婚したの。でもジュニアが5歳の頃、お母さんが出ていったことがものすごく堪えたのね。ジュニアはウクレレを棚に置いて、戸を閉めてエルヴィス・プレスリーを聴くようになったの。それで勉強の成績も下がったし、すごくつらかったみたいだけど、大人の事情だからしようがないよね。奥さんに『なんで出ていくの?』って聞いたら『もう疲れたの』って(大笑)。でも歳をとったら人間は助け合わないといけないのよ。細かいことはどうでもいいから、助け合って生きればいいのね」

――ジュニアさんは子どもの頃から音楽が上手かったんですか?
「そうね、ジュニアは幼稚園からハワイアンも日本人も中国人もサモアンも、いろんな国の子どもがいる学校に通っていたの。学年が違ってもみんなが一緒に学ぶ学校で、上の子が下の子に教えるのよ。絵が上手かったら絵を重点的に描かせるとか、才能を引き出すことに熱心な学校だった。あの子は手が器用で、機械ものはなんでも直せたのよ。僕の父親に似たんだね」

――ジュニアさんにはウクレレの神様と呼ばれるお父さんがいて、大きな影響を受けながらも自分のスタイルを確立しようと頑張ってこられたわけですよね。同じプレイヤーとして、ジュニアさんのウクレレを聴いてどう感じていますか?
「彼はハワイアンが好きだから、僕のスタイルとはまったく違う。昔、自分のスタイルでやってくれと言ったのよ。それでいいし、それが一番いい。でも彼がバンドをやめてソロでハワイアンをやりだしてから、たまに一緒にプレイするようになったんだけどね。彼のプレイを見ていて、僕が教えたことをやっているなと思うことは、ノートをはっきり弾くこと。それは大事なことなの。僕も毎日練習したことだから、彼にもアドバイスしたの」

1975年製の6弦カスタムモデル。通常のカマカの6弦モデルはテナーボディのみだが、オータサンからの提案でコンサートボディに6弦仕様のネックをつけたそうだ。テンションが強いので弦をピンでとめるタイプのブリッジに交換。複弦の1弦はオクターブ、3弦はユニゾンにし、4弦はローG。やわらかな音がするウクレレ。


――息子さんと共演するのって、照れくさかったりしますか? それともほかのミュージシャンと共演するのと一緒?
「べつに、誰とやるのも同じ気持ちよ(笑)。ジャズとか僕が好きな音楽の場合、相手が僕を押すか引くか、どっちかね。一緒にプレイする人がどんなプレイを仕掛けてくるかで変わってくるの。それは相手が息子でも同じね。でもハワイアンミュージックだとそうはいかない。たとえば昔の曲をレゲエみたいに演奏すると、年寄りは怒るの。ハワイアンはアメリカの音楽とは違うのよ。だから僕はジャズとかが好きなんだけど、ジュニアみたいにハワイアンを積極的に演奏して、ハワイの文化を大切に引き継いでいくのはすごくいいことだと思う」


――若い人に教えることには興味ありますか?
「たくさん教えたよ。相撲取りの曙が子どもの頃にも教えたの。あの子は新聞配達をしながらレッスン代を稼いで習っていた偉い子だったの。一人で僕のスタジオに来てレッスンを受けたいって。譜面もちゃんと読めて上手かったのよ。それである日僕は言ったの。『レッスン代はいらないから、お母さんに何か買ってあげなさい』って。それ以来レッスンに来なくなっちゃった。まさかあの子があんなに大きくなって相撲取りになっているなんて思わないからビックリしたよ(笑)。でも日本で子どもたちに教えるのは大変よ。日本の子どもたちは勉強が忙しくて、やることがたくさんあるんだもの」

――日本でも最近は子どもや女性、お年寄りなど幅広く多くの人がウクレレを弾いて楽しんでいますよ。
「ウクレレは女性でも弾ける楽器だから、もっとネックを細くした方がいいと思うの。だからマーティンのネックが一番いいのよ。あ、僕ね、広島の原爆で生き残った木でウクレレを作って、広島で演奏したいと思ってるの」

――それいいですね! ではこれからのライフワークとしてオータサンがやっていきたいことは?
「僕は引退したい(笑)」



カマカ・ウクレレクラブ・ジャパンのイメージキャラクター、カマカちゃんとのツーショット。
――いつもそういうことを言ってはぐらかしますよね(笑)
「僕はもう元気がないのよ(笑)。僕はね……音楽は一緒にプレイする相手によって自分もどんどん変わっていくと思うの。ベースプレイヤーがすごいことすると自分もすごいことをやってみたくなる。そんなふうにずっと音楽をやっていければいいのよ。もう難しいことはやりたくないけど(笑)。僕はロマンティックでスローな曲が好きなの」

――オータサンのお母さん、オータサン、ジュニアさんと続いてきた音楽の才能をお孫さんが引き継いでいるかもしれませんね。
「才能とか遺伝なんて信じる? 僕は信じないよ(笑)。ただ一生懸命練習すればいいのよ」























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